TOP ― 木造・免震基礎 ― 第5章 考察 5.2 鉛座金の支圧破壊による抵抗力

第5章 考察 5.2 鉛座金の支圧破壊による抵抗力
実験パターン2の鉛座金それぞれの枚数でベースプレートの移動がベースプレートの穴の範囲内に収まっていた重錘高さ35mm(衝突速度約30kine)の実験について考察する。どの波形も、5.1で見られたような静止摩擦力を受け、その後滑り出してから再び鉛座金により抵抗力をうけるというように、二段階で抵抗力が加わっていることが分かる。後の方の抵抗力は、5.1で考えた動摩擦力に鉛座金の支圧破壊による抵抗力が加わったものであると考えられる。また、若干ボルトの曲げ変形も生じているが、実験パターン1(ボルト曲げ変形)の結果で見られた程の加速度は発生していないことから、鉛板の抵抗力の方がボルトの曲げ変形による抵抗力よりも小さいと考えられる。またボルトの曲げ変形に比べ衝突速度による影響も小さかった。
鉛座金の枚数と鉄骨加速度の関係を図25と表7に示す。ただし、鉄骨加速度とは図25上の合成波で鉛座金が効いている区間(鉄骨基礎が滑っている間)の加速度の平均値とした。

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この表から、動摩擦による抵抗力が130galであるから、鉛座金が左右で一枚ずつ増えると約60galほど加速度が大きくなることがわかった。この実験の範囲内では、鉛座金の積み重ねにはほぼ加算則が成り立つことがわかった。一方、鉄骨基礎が滑っている間、鉛座金はほぼ一定の抵抗力を発生していることから、ベースプレートのアンカーボルト穴を拡大し、鉛座金を大きくすることで、さらに大きな衝突速度の衝撃力にも吸収力を発揮できると考えられる。その際、衝突のエネルギーは速度の二乗に比例し、摩擦や鉛座金によって吸収されるエネルギーは制動距離に比例する。すなわち、2倍の速度の衝撃力を吸収するためには、4倍の制動距離が必要となる。
また、参考として表8に木造住宅の一般的な重量とその際に必要と考えられる鉛座金の数量を示す。